本質に迫るー甲賀吉郎

社会や経済の事象を一歩掘り下げて考えるブログ

新型コロナの実感染者数と実致死率のレベル

新型コロナ感染症は、欧米の第一波の感染爆発が峠を越す段階に入った。また抗体検査などのデータも少しずつ出てきたので、そろそろ感染の段階の把握を行う時期にきている。
 
これまでの感染症と新型コロナの違いについて最も大事なことは、無症状ながら感染力を持つ感染者がかなり多そうだということだろう。
 
従って、今使われている「感染者」と「致死率」という言葉は、十分気を付けないと混乱した議論を呼ぶ危険がある。
 
そこでここでは、無症状感染者を含めた感染者を「実感染者」とし、「実感染者」を分母とした致死率を「実致死率」と呼んで区別することとする。

「実感染者」の数を、わずかに出てきた抗体検査のデータ(ドイツ、ニューヨーク市、東京)から推定し、感染爆発した欧米の米伊仏英西とニューヨーク市および感染爆発を抑えている独日韓と東京都の「実感染者」と「実致死率」のレベルを推定してみた。またクルーズ船ダイアモンドプリンセスのデータも参考とした。
その結果を下記にまとめてみた。尚、補遺を末尾に記している。

1-1 感染爆発した米伊仏英西とニューヨーク市での、「実感染者率(対人口比)」は10~20%程度で、まだ集団免疫の60~70%にはほど遠く、ワクチンや薬の整備との兼ね合いはあるが、第二波、第三波は避けえない。
 
1-2 感染爆発した米伊仏英西とニューヨーク市での、致死率は6~20%で大変高いが、「実致死率」は0.1~0.8%で、筆者予想の1% (4/12記事)よりは低いが、インフルエンザの致死率0.1%よりは高いと予想される。
 
2-1 感染爆発を抑えている独日韓と東京都での、「実感染者率(対人口比)」は、3~6%程度で、当然ながら感染爆発した国の1/3までしかいっておらず抗体を持ってない人がほとんどである。従って、第二波をどう上手く抑えるかが大きな課題となる。検査率(対人口比)が、感染爆発国では1~5%と多く、独は3%で爆発国並みだが、韓国は1.2%で少なく目である。韓国は第二波発生時を見据えた対策中のようである。日本や東京は、検査率が0.14%で論外に低く、次の波までにかなりの体制整備を行わないと今度は感染爆発を抑えられない可能性がある。
 
2-2   感染爆発を抑えている独日韓と東京都での、致死率は2~4%であるが、「実致死率」はドイツが0.12%で、日韓と東京都は、0.01%台である。ドイツは上手にインフルエンザ並みに抑えている。日韓が更に一桁低いのは、欧米とアジアの差と思いたいところではあるが、まだわからない。
 
3  クルーズ船ダイアモンドプリンセスは、この文脈で貴重なデータであるが、実感染者率は19.2%で、実致死率は1.8%である。悪い環境と完璧でない対策の中での一ケ月での実感染者率と実致死率の実績データと考えらえる。実感染者率は、欧米の感染爆発国と同程度であり、本論での推定レベルを実証するものである。実致死率は、感染爆発国と日独韓の中間であり、欧米人とアジア人の差が影響している可能性もあるが、武漢からのウイルスの為かもしれない。
 
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<補遺>
数値自身は、省略している。ここでは粗いレベル推定が目的なので。
 
本来の意味の感染者とは、感染症にかかり他の人にもうつす人である。
そこで感染者を下記のように分解してみる。
感染者 = 無症状感染者 + 症状有り感染者
感染者 = 未検査感染者 + 検査陽性者
 
これまでの感染症では、無症状感染者≒ゼロ、未検査感染者≒ゼロなので、
感染者 ≒ 症状有り感染者
感染者 ≒ 検査陽性者
致死率 = 死亡者/感染者 = 死亡者/検査陽性者
として使われてきた。インフルエンザでも平熱の保菌者で未検査の人がゼロではないが、感染力もほとんどないので実際には問題になってこなかったということである。新型コロナでもこの使い方が踏襲されており、新型コロナの感染者数=検査陽性者数として理解されているし、致死率も検査陽性者数を分母として議論されている。
 
ところが、新型コロナでは無症状感染者を無視できないようなので、これでは混乱を招く。今、抗体検査が部分的に行われて、PCR検査陽性者よりも10倍以上多い結果が出つつある。もしIGG抗体がこれまでの感染症と同様に、少なくとも一年程度は有効であるとすると、最悪の新型コロナ流行の収束である集団免疫の議論では、無症状感染者や未検査感染者を考慮しないと議論にならない。
 
そこでここでは、無症状感染者を含めた感染者を「実感染者」とし、「実感染者」を分母とした致死率を「実致死率」と呼んで区別する。
 
「実感染者」は、東京とニューヨーク市とドイツの抗体検査の結果から推定して、その他の国のデータは、「実感染者」と検査陽性者との倍率を、検査率(人口比)と検査陽性率(人口比)をそれぞれパラメータとして、内挿して求めてみた。大変粗っぽい推定ではあるが、抗体検査や全数PCR検査などのデータがほとんどない現状では、全体を見るための一つの参考になると割り切った。細かい数値は掲示しないが、データの出典はおよそ次のとおり。
 
対象とした国や市は、感染爆発した欧米の米伊仏英西とニューヨーク市、感染爆発は抑えられていると思われる独日韓と東京都とした。またクルーズ船ダイアモンドプリンセスのデータも参考とした。
 
人口は2019年データ。
 
PCR検査陽性者数、死者数は、2020年5月3日に入手できたデータとした。多少古いものが混ざるが全体に影響は軽微と思われる。
 
陽性率、(PCR)検査数は、出典によって差があるので、4月28日のOECDデータ、5月4日のWIKIのcovid-19_testingのデータの両方を用いた。尚、東京の検査件数は民間をいれて2万と推定した。ニューヨーク市の検査件数は州のデータから40万と推定した。
 
抗体検査での感染率は、ニューヨーク市は4月23日記事から20%、ドイツは4月15日記事の感染者が多いガンゲルトでの結果14%から、ドイツ国全体では半分の7%とした。東京は、病院の非コロナ患者の検査結果(慶應病院6%、千駄ヶ谷クリニック8%、ナビタスクリニック5.9%)から、6%とした。病院来訪者というフィルターは無視した。
 
以上