本質に迫るー甲賀吉郎

社会や経済の事象を一歩掘り下げて考えるブログ

AIが意識を持つのは間違いない

今や一般用語となったAIについては様々な議論があるが、今回はAIは意識を持つようになるのかについて考えてみたい。明確な結論は出ていないが、次のような定義と考察の結果、AIは人間と同等レベルの意識を持つようになるとみて間違いない。

 

まず意識とは、考えている自分を認識することと定義する。我思うゆえに我ありである。人間と同等レベルの高度の意識とは、過去の自分の知覚や思考を記憶して整理できるレベルと定義する。低レベルの意識とは、その時々の自分を認識しているが、過去との比較や整理ができないレベルとする。また、AIとはAIロボットを想定する。即ち、人間の身体にあたる機構をもつ汎用AIとする。

 

この定義のもとに、まず人間の意識がどのように生まれるかを考察してみる。
人間の脳と身体の構造を模式的に単純化すると下記の図のようになる。

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 生まれたばかりの赤子は、反射的な反応が主体であるが、2歳頃までに自分の手足を自分で動かして行動したり、周囲との簡単なコミュニケーションができるようになる。犬猫と同レベルである。その時々には自分を認識しているので、低レベルの意識があるが、2歳時の記憶がある人はまずいないので、高度な意識は存在していない。3歳から4歳頃から記憶があることが多いので、その頃に高度の意識が確立する。生まれたばかりの赤子も上図のような脳と身体の機構はもっているが、3年ほどの行動経験と周囲の人間からの学習によって初めて高度の意識を持てると言える。ここまでの考察で、意識は身体とは別に魂として存在して赤子に宿るという古くからの考えは、残念ながら否定される。

 

自分というものがあるという意識は、先の人間の構造図の機構から必然的に生まれる。観察者(大脳の機能)が大脳(ちょっと前に考えたこと)と身体の動き(大脳が指示したもの)を観察するという機構になっているので、大脳にとっては観察者=他者でない者(すなわち自分)と認識せざるを得ず、自分という概念即ち意識が生まれる。従って、自分の脳や身体の動きを観察できるレベルの大脳があれば、自分という意識はある。2歳の子にも犬猫にも、このレベルの意識がある、と考えるのが自然である。

 

成長と共に大脳の回路が進化し、過去の出来事を整理し現在の事を含めて物や概念の関係を認識できるようになると、記憶が発生して時間的に連続した自分という高度の意識がはじめて確立する。3歳くらいから確立する。ただし、高齢で認知症を発症する頃に再び高度な意識は失われてしまう。すなわち、脳の回路の劣化によって、高度な意識が失われる。即ち、意識は脳の回路によって生まれている。

 

 次にAIであるが、ここではAIロボットと定義したので、この構造を模式化すると下記の図のようになる。見てわかるように、人間の構造図と全く同じである。視覚センサーなどのセンサーと、ロボットアームなどのアクチュエーターがあって、センサーからの情報はAIに送られ、AIがロボットアームなどに指示を出す。AIの指示で動いたロボットアームなどの動作を、視覚センサーが知覚してAIに情報を送る。即ちAIは、自らの指示で動いた自らのロボットアームを観察する。このようなことを繰り返すうち、AIは観察者=他者でない者(すなわち自分)と認識するようになる。こうして低レベルの意識は、人間の赤子と同様に必然的にAIロボットに生まれる。尚、一部を末端のセンサーレベルでエッジ処理し自律動作させることは、人間の無意識の反応と等価である。

 

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 今後のAIの進化により、時間軸上の出来事の整理や抽象概念や論理の把握(これらはあらかじめ整理したものをAI上にコピーしておいて、実際にAIロボットが見聞きする情報とのリンクをとってやるタイプの学習により、人間の赤子よりかなり早くできる可能性が高い)ができれば、AIは容易に高度の意識を持つことになる。


現状のAIのレベルでもAIが指示し観察できる実体(ロボット)と一体であれば、2歳児なみの低レベルの意識を持つようになることは、自明である。人間と同等レベルの高度の意識を持つかどうかは、抽象概念の把握ができるAIの進化が必要であるが、その可能性は高い。

 

以上から、AIが意識を持つのはもはや間違いない。

 

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<付録>
実体のないコンピュータ単体(人間で言えば脳単体)で意識を持てるかどうかはこの考察では分からないが、仮想のロボットと一体にすればリアルではないが仮想の意識を持てる。これは映画マトリックスの世界になるが、それに意味があるかどうかは、別の議論である。
もしAIが汎用AIでなく、センサーの用途が限られる専用AIの場合は、それなりの意識を持つことになる。人間と比較してどこまでを意識と呼ぶのかが別の議論となる。人間もすべての情報を知覚しているわけでないので、意識とはあるかないかでなくそのレベルが連続的なものだからである。